この記事の監修者
聖マリアンナ医科大学医学部付属病院皮膚科、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院皮膚科にて勤務したのち、医療法人社団奏愛会 おおふな皮膚科など皮膚科クリニックにて研鑽を重ね当クリニックにて勤務。
肝斑は女性で悩んでいる方が多いと言われるシミの一つです。美白化粧品を使っても改善しない、メイクをしてもきれいに隠せないとお悩みではありませんか?そもそも、自分のシミが肝斑なのか分からない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、肝斑と普通のシミの見分け方、効果的な治療方法などを詳しく解説します。気になる肝斑を目立たなくしたい方、肌の自信を取り戻したい方はぜひ参考にしてみてください。
肝斑の特徴
肝斑と普通のシミとでは有効な治療方法が異なります。しかし肝斑は自分では見分けるのが難しく、間違った治療法を選択してしまう可能性もあります。
肝斑とシミを見わける最も大きなポイントが、どこにできているか、どのように広がっているかという点です。
肝斑ができる場所
肝斑の多くは、頬の高い部分にできます。頬全体にもやっと広がることもあれば、目尻側にだけ集中してできることもあるのが特徴です。ほとんどの肝斑は、左右対称に広がっています。
ただし、頬以外の場所にできることもあるので注意しましょう。鼻の下や口の周り、額などにもできる可能性があります。肝斑かどうか自分で見分けがつかない時は、医師に相談しましょう。
肝斑とシミとでは輪郭が違う
肝斑は輪郭がはっきりとしておらず、全体的にもやっとした印象になっています。一方でシミは、輪郭がくっきりしていることがほとんどです。
肝斑ができる原因
肝斑は、基本的にホルモンバランスが原因だと言われています。女性は妊娠・出産や更年期などによりホルモンバランスが変化しやすいため、その影響を受けやすいのです。
ホルモンバランスの変化
妊娠するとホルモン量がぐっと増え、出産すると一気に減少します。40代半ばごろになると、ホルモン量が減少し始めて更年期を迎える方が多いでしょう。
このように、女性の体内ではホルモンバランスが変動するシーンが何度か訪れます。ホルモンが具体的にどのようなメカニズムで肝斑を引き起こすのかについては、何らかの影響をもたらしているという説が濃厚です。
ピルの服用
月経困難症や子宮内膜症などの治療に用いられるピルも、肝斑ができる原因だと言われています。また、もともと肝斑があった方がピルを服用すると、症状が悪化したというケースも少なくありません。
メイクやスキンケアによる摩擦
肌への摩擦が肝斑の原因ではと言われることもあります。頬のあたりはメイクやスキンケアで擦ることが多いため、摩擦による刺激を受けやすいのです。肌は刺激を受けるとメラニン色素を作り出してしまうため、摩擦も原因の一つとして考えられるでしょう。
肝斑の治療法
肝斑の治療方法には、様々なものがあります。肝斑の状態によって適切な治療方法が異なるため、合わない治療をして時間とお金を無駄にする可能性があります。医師に相談してぴったりの治療方法を見つけることをおすすめします。
塗り薬
塗り薬には以下の治療法があります。
ハイドロキノン
ハイドロキノンは、肌の漂白剤と呼ばれることもあるほど強い効果をもつ塗り薬です。メラニン色素を作り出す工場ともいえるメラノサイトの働きを抑制します。
また、メラニンを作るために必要な酵素も阻害する働きがあるため、既にできてしまった肝斑を薄くしたり予防したりする効果が期待できます。
トレチノイン
トレチノインは、ハイドロキノンと併用されることが多い塗り薬として知られています。ビタミンAの誘導体で、ターンオーバーを活性化させてメラニン色素を排出したり、コラーゲンの分泌を高めたりする効果がある塗り薬です。
飲み薬
飲み薬には以下の治療法があります。
トラネキサム酸
トラネキサム酸は、肝斑の改善に効果がある飲み薬として知られています。メラニン色素を作り出すメラノサイトの働きを抑えることで、肝斑の発生を阻害するものです。トラネキサム酸の飲み薬は、市販薬としても販売されています。
美容クリニックでの治療
美容クリニックでは以下の治療法があります。
ピーリング
ピーリングとは、薬剤の力で古い角質を取り除くものです。皮膚のターンオーバーを促進させるため、肝斑の治療に効果があります。肝斑のほか、ニキビ跡やくすみ、小じわや毛穴の開きなどにも効果が期待できる治療です。
フォトフェイシャル
フォトフェイシャルは、IPLと呼ばれる光線をお肌にあてることで肝斑を改善します。シミの種類や深さに応じて波長を使い分けることで、肝斑だけでなく通常のシミにも効果を発揮することが特徴です。
ポテンツァ
ポテンツァは、マイクロニードルを皮膚に刺し、ラジオ波をあてたり、肌に薬剤を直接届けることで肌の悩みを改善します。メラノサイトがラジオ波の影響を受けることにより、メラニン産生が抑制されるため、肝斑治療に効果的です。ニードル(針)と聞くと痛みが心配になるかもしれませんが、極細の針を使用しているためごくわずかな痛みしか感じません。他の治療で改善しなかった肝斑にも効果が期待できるでしょう。
肝斑治療にかかる費用と期間
「できるだけ早く肝斑を目立たなくしたい」
「時間がかかってもいいから、お財布に優しい治療をしたい」
人によってどのような治療を求めているかは違うでしょう。それぞれの治療にかかるおよその費用や期間を紹介するのでどの治療を受けるか目安にしてみてください。
ハイドロキノン
費用:約2,000円
期間:2~3ヶ月
ハイドロキノンの塗り薬は、1本2,000円前後が多いでしょう。治療期間は2~3ヶ月です。2~3ヶ月続けても効果が十分でない場合は、一旦1ヶ月ほど休薬してから再び2~3ヶ月治療を始めます。
トレチノイン
費用:約4,000円
期間:2~3ヶ月
ハイドロキノンと同じく、2~3ヶ月が治療期間の目安です。十分な効果が得られなかった場合は1ヶ月の休薬を挟んだ上で再び2~3ヶ月使用を続けます。ハイドロキノンは連続して使用できませんが、トレチノインはお肌に異常がなければ使い続けることも可能です。
トラネキサム酸
費用:約2,500円(1ヶ月分)
期間:1~2ヶ月
トラネキサム酸による飲み薬の治療は、1~2ヶ月程度が目安です。早い方ですと服用を始めて4~5週間ほどで効果を実感できるでしょう。ただし、完全に肝斑をなくすためには1~2ヶ月だと効果不足のことも少なくありません。人によっては完全に消すためには1年ほどかかることがあります。
ピーリング
費用:約12,000円(1回)
期間:6~12ヶ月
ピーリングは、一度の施術で肝斑を完全になくすことはできません。数回にわたる治療を受けることが基本です。2~3週間に1度、合計で10回ほど受けると治療が完了します。
フォトフェイシャル
費用:約13,000円(1回)
期間:3~6ヶ月
フォトフェイシャルも数回にわたる施術が必要です。肝斑の状態によって必要な施術回数が変わるため、それに応じて治療期間も変わります。
ポテンツァ
費用:約30,000円~(1回)
期間:約1ヶ月半
ポテンツァの効果は、施術から約1ヶ月~1ヶ月半後くらいに出ることが特徴です。1回でも効果を実感できますが、複数回受けることでよりしっかりと効果が出てきます。複数回受ける場合は、1ヶ月半~2ヶ月に1回の頻度で受けることが多いでしょう。
よくある質問
肝斑に関してよく寄せられる質問についてお答えします。
肝斑の治療は保険が使えますか?
肝斑の治療は、基本的に保険診療の対象外です。トラネキサム酸は止血や炎症止めを目的として保険適用で処方されることがありますが、肝斑には保険が使えません。これはトラネキサム酸が保険を使った肝斑治療として承認されていないからです。
一度治療したらもう再発することはありませんか?
肝斑はホルモンバランスの変化が大きく関係しているため、再発の可能性はあります。治療法によっては再発しづらいものもあるので、医師に相談してみましょう。
治療中は紫外線対策が必要ですか?
肝斑は紫外線があたることで悪化する可能性があります。治療中のみならず、治療後も日頃から紫外線対策を行うことが大切です。
飲み薬だけでも治療できますか?
トラネキサム酸の飲み薬だけで改善される方もいます。しかし、治療に時間がかかったり、飲むのを止めると再発したりしたという方も少なくありません。他の方法も合わせて行うことで、より効果的な治療ができるでしょう。
肝斑は見分けるのが難しい!医師に相談して、自分に合った治療を始めよう!
肝斑は、主にホルモンバランスの変化が原因となってできるシミの一種です。両頬に左右対称にできることが多く、輪郭はぼんやりとしています。塗り薬のハイドロキノンやトレチノイン、飲み薬のトラネキサム酸、美容クリニックで受けられるピーリングやポテンツァなどが代表的な治療方法です。
それぞれ費用や治療に必要な期間が異なるので、自分のライフスタイルに合ったものを選んでみましょう。
「シミがあるけど肝斑かどうかわからない」という方は、医師に相談してみるのをおすすめします。自己流ではなく専門家に相談して治療をすることで、適切な治療ができるでしょう。
<筆者プロフィール>
岡本 妃香里(薬剤師/医療ライター)
大手ドラッグストアで薬剤師として勤務経験を経て、現在は医療ライターとして活動している。
薬剤師だけでなく、化粧品検定1級、薬事法管理者、コスメ薬事法管理者などの資格も取得し、美容と医療の情報提供を得意とする。