12種の生薬配合のニキビ漢方「清上防風湯」は、炎症ニキビ・膿が溜まってしまったニキビの改善に効果的。

清上防風湯（せいじょうぼうふうとう）は保険適用でニキビ治療ができる漢方薬です。
脂っぽい肌にできる赤く腫れて膿をもった「思春期ニキビ」に効果があります。ニキビそのものを改善する効果のほかに、脂っぽい肌の改善など体質改善も期待できます。
また、塗り薬や抗菌薬が合わない場合や、ほかの治療では思うような効果が得られなかった方に対して、漢方薬は優れた治療法の選択肢になります。
この記事では清上防風湯について効果や副作用、効果が出るまでの期間、飲み方まで解説します。ニキビでお悩みの方は治療の選択肢の一つとして検討してみてください。

清上防風湯とは？赤みのあるニキビに使われる漢方薬

清上防風湯は、12種類の植物の根や果実を加工した生薬が配合された漢方薬です。配合された生薬には、炎症を鎮めたり、膿を出す効果など赤みのあるニキビの治療に適した成分が含まれています。
ニキビのほかに、化膿しているおでき（せつ、疔）、湿疹、あか鼻（酒さ）、尋常性毛瘡（カミソリ負け）などの皮膚疾患に効果があります。

現在は煎じる必要のないエキス顆粒の処方が主流です。エキス顆粒は簡単に飲むことができ、携帯や保管がしやすいというメリットがあります。

清上防風湯の効果

漢方医学では、血行が悪くなり体にこもった熱は上に上がって行き、顔や頭のニキビ、おできなどの原因になると考えられています。
清上防風湯は、上半身に上がった熱を発散させて、かゆみや腫れを改善します。肌の乾燥や生活習慣の乱れによってできる「大人ニキビ」の治療には適していません。また、赤ニキビよりも症状の軽い面ぽう（コメド）、白ニキビ、黒ニキビには、ほかの漢方薬が適しています。
清上防風湯に含まれる12種類の生薬は、それぞれニキビ治療に適した作用があり、続けることでニキビの原因である脂っぽい肌の改善も目指すことができます。

清上防風湯はどんなニキビに効く？効果が出る時期は？

清上防風湯は、炎症を起こして腫れている赤ニキビや、膿をもってとがっている黄ニキビに効果があります。特に、皮脂の分泌が盛んな思春期によく見られるニキビに効果的です。
思春期にできるニキビの多くは、皮脂の過剰な分泌が原因です。過剰に分泌された皮脂や余分な角質が毛穴に詰まると、ニキビとして症状を現します。はじめは毛穴が閉じている白ニキビであまり目立ちませんが、症状が進み毛穴が開くと、皮脂が空気に触れて黒っぽくなる黒ニキビになります。さらに毛穴の常在菌であるアクネ菌が増殖すると、炎症を起こし赤ニキビとなり、表皮ブドウ球菌も増殖すると膿をもった黄ニキビになります。

清上防風湯は、炎症が起きている赤ニキビと膿をもった黄ニキビに効果があります。

また、漢方薬の処方では「証」という考えがあり、症状だけでなく体質や病気に対する抵抗力を見て処方を決めていきます。清上防風湯は中間証から実証、つまり体力があり赤ら顔でのぼせやすい人にできるニキビに向いている処方です。
効果が出るまでの期間は数日から1週間程度であり、4週間続けても効果が見られない場合は、ほかの漢方薬や治療法への変更を検討します。
清上防風湯を基本治療として、症状に応じて塗り薬を一緒に使ったり、症状がひどくなった時だけ抗菌剤を服用するなど併用することもできます。

清上防風湯の副作用と使用時の注意点

清上防風湯の副作用は、胃もたれや食欲不振、吐き気などが挙げられます。これらは続けるうちに慣れることの多い症状ですが、つらい場合は医師に相談しましょう。

以下の方は、清上防風湯を服用するのに注意が必要です。

• ●胃腸が弱い体質の方、日頃から吐き気が出やすく食欲がない方
• ●妊婦または妊娠の可能性がある方

もともと胃腸が弱い体質の方は、吐き気や食欲不振の症状を悪化させてしまうことがあります。また、妊娠中の方は医師が必要であると判断した場合のみ飲むことができるお薬です。自己判断で飲まないように注意しましょう。
重大な副作用として、清上防風湯に含まれる「甘草（カンゾウ）」を取り過ぎることにより血液中のカリウムが減る「偽アルドステロン症」があります。初期症状はだるさやむくみ、体重増加、血圧上昇で、甘草を含むほかの漢方薬と長期間併用した場合に起こりやすくなることが分かっています。ほかに、下痢や腹痛が続いたり脱力感がある時は、すぐに服用を中止して医療機関を受診してください。

以下の薬は、清上防風湯との併用で偽アルドステロン症を引き起こしやすくなるため注意が必要です。

• ●甘草を含む漢方製剤
• ●グリチロン配合錠など、グリチルリチン酸を含む製剤
• ●一部の利尿剤(例：ラシックス　フロセミド)

甘草は多くの漢方薬に含まれる成分です。当クリニックでニキビ治療の漢方薬として処方する「十味敗毒湯」にも甘草が含まれているため、併用はおすすめできません。ほかに飲んでいる薬がある場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。
また、漢方治療では改善する過程で症状が一時的に強くなったり、予想しない別の症状が出ることがあります。これは「好転反応」または「瞑眩（めんげん）」と言われるもので、一般的に飲みはじめて2週間以内に起こることが多いとされています。好転反応が終わると症状は改善に向かいますが、好転反応と副作用は区別が難しいため、不快な症状が起こった場合は自分で判断せず、早めに医師に相談することが大切です。

清上防風湯の正しい飲み方

漢方薬には独特な臭いや苦味、舌触りがあります。清上防風湯エキス顆粒の正しい飲み方と工夫、注意点を解説します。服用の際の参考にしてください。

●飲むタイミング
清上防風湯は1日2～3回、食前または食間に飲むお薬です。食前とは食事を取る30分～1時間前、食間は食事と食事の間のことで、食後およそ2時間後が目安となります。空腹時に飲むと漢方薬の吸収が良くなり、食事の影響も受けないため効果的です。食前や食間に飲むと気持ち悪くなったり、どうしても食前に飲めない場合は食後に飲むようにしましょう。

●飲み方
水または白湯で、ほかの粉薬と同じように飲みます。先に口の中に顆粒を入れると飲みづらいため、まず水または白湯を口に含み、後から顆粒を入れると飲みやすいです。ジュースやお茶は漢方薬の吸収に影響を与えることがあるので、なるべく避けましょう。
それでも顆粒が口の中に残ったり、歯に挟まるのが気になる場合は、白湯に溶かして飲む方法がおすすめです。20～30cc程度の白湯に入れて良くかき混ぜて飲みます。濃く感じたり、熱い時は水で薄めてください。臭いや味がどうしても苦手な場合は、オブラートや服薬ゼリーを使うのもよいでしょう。

●注意点
飲み忘れた場合は2回分を一度に飲まず、気付いたときに1回分だけを飲みます。1日2回の場合は6時間以上の間隔を、1日3回の場合は4時間以上の間隔を空けるようにしてください。
また、漢方薬のエキス顆粒は湿気を帯びやすい特徴があります。湿気を避けて保管し、長期間保管する時は乾燥剤と一緒に入れておきましょう。

もし臭いや味が苦痛で飲めない場合は、清上防風湯が体質に合っていないことが考えられます。その場合は医師に伝えて、処方の変更を検討してみてください。

清上防風湯以外のニキビ治療の漢方薬

清上防風湯以外のニキビ治療に使われる代表的な漢方薬とその特徴をまとめました。

※甘草が含まれるため、併用に注意が必要な漢方薬です。

当院でのニキビに対する治療法

当クリニックでは保険診療（保険適用）と保険外診療（自由診療、自費診療）を行っており、幅広い選択肢からご自身に合った治療法をお選びいただけます。

保険診療（保険適用）は、保険証の提示により原則3割負担の医療費で治療を受けることができる診療です。
保険診療では、現在できているニキビの治療に対応しており、外用剤、抗菌内服剤、漢方薬の薬を使った治療が主になります。症状に応じて、毛穴に詰まった膿や角質を圧迫して取り出す面ぽう圧出も行います。重症化したニキビやニキビ跡の改善は保険診療の治療では難しいケースがありますが、経済的負担が軽いため治療をはじめやすいメリットがあります。清上防風湯でのニキビ治療も保険診療になります。

一方、保険外診療（自由診療、自費診療）は、保険証を使わず医療費は全額自己負担となります。幅広い症状に対応でき、治療の選択肢が多いことが特徴です。
保険外診療では、すべての段階のニキビ治療とニキビ跡やクレーター、色素沈着の改善、肌質改善を行うことができます。保険診療の治療が合わなかった方や思うような効果が得られなかった方は、保険外診療の治療を検討してみてください。

ニキビ治療一覧

当クリニックで行う保険適用と保険適用外のニキビ治療についてまとめました。治療を受ける際の参考にしてください。

<保険診療>　保険適用で3割負担

<保険外診療>

清上防風湯についてよくあるQA

清上防風湯についてよくある質問に回答します。

Q.ドラッグストアで売っている清上防風湯は、病院で処方されるものと同じですか？

配合されている生薬の種類は同じですが、成分量が市販薬の方が少なくなっています。これは安全性を考慮しているためです。市販の清上防風湯は成分量が少ない分、副作用が起こりにくく、効き目もマイルドになります。

Q.ほかの漢方薬を清上防風湯とまとめて一緒に飲んでもよいですか？

違う種類の漢方薬をまとめて飲むと、過量で副作用の原因になったり、生薬の配合バランスが崩れて期待する効果が出ないことがあります。時間を空けて飲むなど、対処法がある場合もあります。ほかに飲んでいる薬がある場合は、医師または薬剤師に相談しましょう。また、以下の生薬を含む漢方薬は、特に過量にならないように注意が必要です。

・甘草(カンゾウ)・麻黄(マオウ)・大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)・附子(ブシ)