顔のしわやエラ張りはその人の印象を大きく左右します。「しわが気になるから思いっきり笑えない」「忙しくてダウンタイムのあるしわ取りはできない」「エラ張りを改善して小顔になりたい」こんな悩みをもつ方も多いでしょう。
ボトックス注射はメスを使わないしわ治療法でさまざまなメリットがあります。
この記事ではボトックス注射について効果や副作用、デメリットについても解説します。ぜひ施術を検討する際の参考にしてみてください。
聖マリアンナ医科大学医学部付属病院皮膚科、聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院皮膚科にて勤務したのち、医療法人社団奏愛会 おおふな皮膚科など皮膚科クリニックにて研鑽を重ね当クリニックにて勤務。
ボトックス注射とは?
ボトックスとはボツリヌス菌が産生する天然タンパク質成分、A型ボツリヌストキシンを注射し、しわやエラの張り、肩こり、多汗症などを改善する治療法です。ボツリヌス菌は猛毒ですが、ボトックス注射で使われている薬剤は、天然のタンパク質からできた毒素を分解生成しているため、ボツリヌス菌の菌体は一切入っていません。なので安全に使用できます。
ボトックスの特徴
ボトックスは筋肉の働きを弱めて、しわやエラの張りを目立たなくします。そのため、どんな筋肉でも効果があるわけではありません。
ボトックスは表情筋などが動いてできるしわに効果があります。反対に、額や眉間の深いしわ、ほうれい線など無表情の時にあるしわにはあまり効果は期待できません。
そのほか、汗を抑えて多汗症を改善する効果もあります。
また、ボトックス注射はメスを使わないためダウンタイムがほとんどなく、忙しい方にもおすすめの治療です。
こんなお悩みに効果的
ボトックスは以下のようなお悩みに効果があります。
- ●表情筋による目尻や眉間、額などのしわ
- ●エラの張り
- ●あごや口元のしわ
- ●ガミースマイル(笑うと歯茎が出る)
- ●肩こり・筋肉で盛り上がった肩
- ●筋肉が発達しすぎたふくらはぎ
- ●脇汗や脇の臭い
ボトックス注射の対応部位と効果
ボトックスは施術後2~3日で効果が出はじめ、2週間で安定します。その後4~6ヶ月程度効果が続きますが、そのまま何もしなければ元の状態に戻ります。効果を保つには3~4ヶ月ごとの施術が必要です。
ボトックスの効果を部位ごとに解説します。
額・眉間・目尻などの表情じわ
ボトックスを注入し表情筋の働きを抑えることで額や眉間、目尻などのしわを目立たせなくします。無表情の時にくっきりと刻まれているしわには、ボトックスとヒアルロン酸の併用が効果的です。
エラ張り・あごのしわ
エラ張りの原因である咬筋にボトックスを注入すると筋肉が緩み、フェイスラインがすっきりし小顔へと導きます。また、あごのオトガイ筋に注入すると、梅干しのようなしわを改善でき、あごがすっきりシャープな印象になります。
バニーライン
バニーラインは笑った時、鼻すじの上部にできる横じわのことで、放置すると消えにくくなります。ボトックスを注入するとしわが平らになり、目立たなくなります。
口角や口元のしわ
左右の口角から下に伸びるしわ(マリオネットライン)の原因は口角を下に引っ張る筋肉です。ボトックスを注入すると下に引っ張る力が緩み、口角が上がります。また、物を食べる時にできる口元のしわにも効果があります。
脇の汗
ボトックスは交感神経に作用して発汗を抑える効果があります。脇の汗が多い、汗が多く臭いが気になるなどの多汗症には脇に直接ボトックスを注入すると、汗の量が減り改善へ導きます。
肩こり・肩のライン
首から背中につながる僧帽筋にボトックスを注入すると肩こりを解消するほか、美しい肩のラインをつくることができます。施術から約1週間で肩こりが改善されはじめ、1ヶ月後には美しい肩のラインがつくられます。
首のしわ
広頸筋(こうけいきん)が発達して筋ばった首のしわを改善します。首へのボトックス注射は内出血を起こしやすいですが、通常は1週間以内に吸収されてきれいになります。
ボトックスの種類
ボツリヌストキシン製剤にはボトックス以外にもさまざまな種類があります。
成分はいずれもボツリヌス菌によってつくられるボツリヌストキシンから抽出・精製したA型ボツリヌストキシンです。精製の過程で有毒成分は取り除かれているため、ボツリヌス菌に感染する心配はありません。
ボツリヌストキシン製剤の種類とそれぞれの特徴について解説します。
ボトックスビスタ
美容医療で「ボトックス」とよばれるものは、一般的にアラガン社が製造販売をしているボトックスビスタが該当します。厚生労働省の承認を得ており、さらにアラガン社が製造から保管まで徹底した品質管理を行い、輸入されています。安全性と有効性をもとめる方におすすめです。
ボトックスビスタは安定化剤として人血清アルブミン、動物由来原料を添加しており、複合タンパク質を含みます。
ボトックスビスタについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
ボトックス
ボトックスはグラクソ・スミスクライン社が製造販売をする保険診療用のボツリヌストキシン製剤です。アラガン社から製造販売承認を継承した製剤で、ボトックスとボトックスビスタは同一医薬品とされています。
コアトックス
コアトックスは韓国のメディトックス社が開発、製造販売しています。複合タンパクを完全に除去しているため抗体を産生しにくく、繰り返し使用しても効果が落ちにくい特徴があります。安定化剤として添加される人血清アルブミンや動物由来原料を含まないため、これらによる副作用、発熱や呼吸困難などの心配もありません。比較的安価なため、コストを抑えてボトックス治療を受けたい方におすすめです。
コアトックスについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
イノトックス
イノトックスは韓国のメディトックス社が開発した液体型ボツリヌストキシン製剤です。
液体型のため希釈の必要がなく、濃度のムラや細菌混入のリスクが少ないのが特徴です。また、人血清アルブミンや動物由来原料を使用していないため、人血清アルブミンによる副作用の心配がありません。複合タンパクも完全除去しているので、繰り返し使用しても効果が落ちることはほとんどありません。
効果持続期間が4~9ヶ月と長く、施術回数をできるだけ減らしたい方におすすめです。
イノトックスについて詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。
ボツラックス
韓国のヒューゲル社が開発・製造しています。アラガン社が製造販売しているボトックスビスタのバイオシミラー(バイオ後発品)で、海外ではリジェノックスという製品名で販売されています。
イニボ
韓国のコバルト社が海外向けに製造するボツリヌストキシン製剤です。安価なのが特徴です。
ニューロノックス
韓国のメディトックス社が製造販売するボツリヌストキシン製剤です。安価なため、費用を抑えて施術を受けることができます。
ボコーチュア(ゼオミン)
ドイツのメルツ社が製造するボツリヌストキシン製剤で、以前はゼミオンとして販売されていました。複合タンパクを除去しているため抗体がつくられにくく、繰り返しの施術でも効果が落ちないことが特徴です。また、25度以下での保存が可能で品質管理がしやすく、常温でも効き目が落ちない製剤です。
ボトックスの副作用
ボトックス注射を打つと以下の副作用が起こる可能性があります。それぞれの症状や回復期間の目安を説明します。
アレルギー反応
ボトックスの成分や添加物である人血清アルブミンにアレルギー反応を起こして腫れやかゆみ、赤みが出ることがあります。これらの症状は通常1週間から1ヶ月で治まります。
注射の痛み
皮膚に針を刺すため、注射部位が一時的に痛くなったり、腫れや赤みが出ることがあります。通常は数時間から数日程度で回復します。
内出血・痛み・腫れ
ボトックス注射を打つ際に細い血管を傷つけて内出血や痛み、腫れを起こすことがあります。施術直後に血行のよくなるような激しい運動や長時間の入浴をすると、これらの症状を長引かせてしまいます。
頭痛
ボトックス注射の効果が出たことによりほかの筋肉に負荷がかかり、頭痛につながることがあります。通常は数時間以内に治まることがほとんどです。発熱やはきけ、めまいを伴う時はクリニックへ相談してください。
表情の不自然さ
過量にボトックスを注入した場合、表情筋が過度に緩み表情をつくれなくなることがあります。ボトックスは時間の経過とともに分解、吸収され効果が薄れるため、通常約3ヶ月~半年程度で解消されます。
噛む力が弱まる
エラ張りの改善で咬筋(こうきん)にボトックスを注入すると、噛む力が弱くなることがあります。日常生活に支障が出ることはありませんが、通常は1週間程度で落ち着くことがほとんどです。
仕上がりが左右非対称
ボトックス注射は筋肉の動きや筋肉量のバランスを見て注入量を決めますが、注入量の調整ができていないと仕上がりが左右非対称になってしまいます。そのためボトックス治療は症例数が多く、熟練の施術者のいるクリニックを選ぶことが大切です。
皮膚のたるみ
ボトックス注射によって筋肉が緩むと、筋肉で支えられていた皮膚がたるんでしまうことがあります。特に年配の方、皮膚が薄い方、肌に弾力がない方に起こる傾向にあり、原因は施術前のデザイン設計不足です。
倦怠感
ボトックスの効果が出過ぎるとまれに倦怠感が出ることがあります。通常は数時間から数日以内に治まりますが、発熱や吐き気を伴う場合はクリニックに相談してください。
効果が出過ぎる
ボトックス注射は効果を早く出そうとして注入量を多くすると、表情が不自然になるほか、頭痛や倦怠感の原因になります。ゆとりをもった治療計画が大切です。
禁忌
ボトックス注射は安全性の高い治療ですが、以下に該当する方は治療を受けることができません。
妊娠中・授乳中・妊娠の可能性のある方
ボトックスは妊娠や胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠中や妊娠の可能性がある方は治療を受けることができません。また授乳中の方も安全性が確立されていないため、治療を受けられません。
ボトックスに対しアレルギーのある方
ボトックス治療で発疹などのアレルギー反応がでたことのある方は治療を受けることができません。アレルギー反応が出た後も治療を繰り返すと、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性があります。
神経筋疾患のある方
重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋萎縮性側索硬化症などの神経筋疾患をもつ方は、ボトックス注射の筋弛緩作用により症状を悪化させるためボトックス治療を受けられません。
筋弛緩剤を内服中の方
筋弛緩剤のダントロレン服用中にボトックス注射を打つと筋弛緩作用が増強し、嚥下障害、閉瞼不全、頸部筋脱力などが起こる可能性があります。
感染症のある方
注射部位に皮膚の感染症がある場合はボトックス治療はできません。感染症部位に注射針を刺すと感染症の悪化やほかの感染症を引き起こす危険があるためです。
よくあるQA
ボトックスに関するよくある質問に回答します。
Q.ボトックスを打ち続けるとどうなりますか?
ボトックスは打ち続けても安全性に問題はないとされています。定期的に打ち続けると効果が持続する時間が長くなり、施術間隔も長くなるメリットがあります。一方で繰り返し打つとごくまれに抗体を産生して、効き目が落ちることがあります。そのため施術間隔や注入量は、効果を見ながら決めていくことが大切です。
Q.ボトックス注射のデメリットは何ですか?
ボトックスは効果の持続期間が6ヶ月程度のため、3~4ヶ月に一度の定期的な施術が必要です。また、ボトックス注射を繰り返していると体の中に抗体ができ、効き目が落ちることがあります。このほか、デザイン設計や注入量の調整が不十分だと期待通りの効果が出ないことがあります。これは施術者の技量不足によるもので、施術を受ける際はボトックス注射の実績があり、施術前のカウンセリングをしっかり行うクリニックを選ぶことが大切です。